うさぎ
2013年 06月 13日
前回に続き、詩村あかねさんが朗読された
もう一つの詩「うさぎ」を紹介します
こちらは2010年に白鳥省吾賞を受賞された詩です
う さ ぎ
さびしいと うさぎは 死んでしまうのだって
死んで
さびしかったことを 知らせるのかな
こんなに さびしかったのに 気づいてもらえなかったと
かたく つめたく なって
ゲージのすみで 死んだ うさぎ
野菜クズは うさぎのために いつも冷蔵庫に入れておいたし
天気のいい日は ベランダに
ゲージをだして 日光浴もさせたけど
それは 愛じゃなかったのかな
なにが うさぎをさびしくさせていたのだろう
ほどよく焼けたクロワッサンみたいな うさぎだった
焼きたてのパンのように やわらかく まるまって
人肌のような ここちよい空気を いつも発散していた
こうして 思い出そうとすれば
うさぎの愛らしさや 命のぬくもりが
ありがたかったと わかるのに
鳴き声も立てない 無表情なうさぎを ベランダの一鉢のように
わたしは 感じていたのかもしれない
おなかがいっぱいでも 雨風が防げても 暑くも寒くもないのに
生きものは 死んでしまう
唐突に 生きることを あきらめてしまう
誰かを癒したり 誰かに叱られたり褒められたり
話しかけられたり 見つめたりされながら
生きているものは
わずかに細い命の糸を 紡いでいくものなのかもしれない
自分の存在が 誰かに迷惑をかけたり 誰かを喜ばせたりすることで
命のベクトルは 明日へ向かうのかもしれない No.479
うさぎの亡骸を ベランダから見える ハナミズキの根元に埋めた
空が 急に 秋になった気がした
決壊したダムのように
わたしは泣いた
by shmino
| 2013-06-13 10:26
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